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親の思う幸いは、子の救いか。

無阿弥陀佛

【住職】


5月となって幾日か経ちました。

暖まった空気が再びの冷やかに。


もう仕舞ってしまった冬布団を恋しがり、

寝息を立てる子供にしがみ付く春の夜です。


あと何回、こんな事が許されるのだろうか。

何度反芻しても、こたえは聞こえるはずもなく。


そりゃそうですね、

たとえあと百万回あっても、今日が最後だったとしても、

この、たった1回の尊さに、変わりはないのですから。


坊守が立法寺twitterを更新しているのを読んでいて思い出した話です。


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先日、小学2年生にして頂いた跡取り息子と耳鼻咽喉科に行って参りました。


それというのも、3月頃から何やら、

息子に於いて、鼻水・鼻詰まり・目のかゆみなどの症状が、

確かに確かにみとめられた為であります。


私自身、四半世紀ほど、春の花粉症さんとお付き合いさせて頂いております。

以前こちらでも書かせて頂きました通り

最初は訳も分からず目を掻き毟っては瞼を開く事が出来なくなったのも、

今では懐かしい想い出です。


しかし、花粉症にずいぶん不自由した事は忘れたつもりはありません。


出来れば息子には、そんな想いはして欲しくない。

しかし、アレルギーならば早めに処置をして頂きたい。


沢山の患者さんがみえた待合室、よく陽のあたるその片隅で、

鼻水をズルズルいわせながらも、笑顔で絵本をめくる彼の隣で、

私はなんとも表現のしようのない想いを授かっておりました。



・・・随分経って呼んで頂いた診察室。

いつもお世話になっている先生はあっさりと仰いました。



「鼻の所見では、まず間違いなくアレルギーですね。」と。



嗚呼、


これから息子には、終わらぬ症状と薬との、一生のお付き合いが待っている。

今まで以上に随分と不自由が増えるだろう。



不自由≠不幸だと、散々如来様からお伝え頂いているはずなのに、

私のもとには、数々の想いが去来します。



終いには、


「なんて気の毒なんだ、出来れば代わってやりたい。」

「息子の分の症状を私が引き受けたい。」


そんな心持ちにさせて頂いた診察でありました。


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扨。


皆様は子を想う親の想いをどのように感じてみえるでしょうか。


我が子が気の毒だ。

我が子の被る厄災を、一身に引き受けたい。


一見、それは素晴らしい心掛けのように見えなくもありません。




しかし、親である私自身に於いて、それは本当でしょうか。




御念佛の御教えは、私の本性を暴きます。

私が忘れて生きている、その悲しみに涙を灌がれるです。



花粉症の息子を、私は「気の毒だ、かわいそうだ」と思いました。

五体満足、いつまでも健康に、息災に生きる事、

それこそが最高の人生だと、思い込んで疑わないのです。


しかし、私の思う幸せが、イコール息子の幸せであろうはずがありません。

たとえ親子と言えども、われらは、善し悪しを異にする者同士なのですから。

従って、私の考える不幸が、息子の不幸なのではないのです。

この思い込みは、私の傲慢以外の何ものでもありません。



また、病気を代わってやりたいとの気持ちは、

子を想っているつもりで、

実に我が力をほこり、たよりとし、私が息子自身を侮っているのです。


「花粉症の苦しみは、息子には無理だろうが、私なら我慢出来る」と。


嗚呼これもまた、大きな大きな慢心なのでありました。




何を隠そう、今、すくわれなければならないのは、

息子ではなく、どこまでも他者を見下し、

己の手柄を見せびらかす、私こそであったのですね。




御念佛は、「佛、我を念じたもう」の大いなる御喚び掛けです。


「我が名を称えよ、必ずすくう」

「まかせよ、まかせよ」と、


常に我が身を照らされながら、それに気付かず闊歩する毎日。毎日。


そんな中で、

「まかせよ」との勅命は、

「まかせられない」自身を思い知らされた時にこそ、

大音声で響いて参ります。



あなたを通して、我が身の至らなさに頭が下がる時、

いよいよわれらを見捨てぬ如来様の大慈大悲が足もと眼前に広がるのです。



正に、息子は私にとってほとけさまでありました。



なるほど、父の言う通りです。



「この世にかわいそうなものはひとりもいない。」



合掌



子の立場から、自身にかけて頂く親心は、大切な大切なものです。

有難いものです。尊いものです。そこは間違いなく。


しかし、親自身が、自分の親心を「有難い」「尊い」と妄想すると、

いよいよ私自慢がはじまります。これが私の本性です。


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